前回のコラムでも書いたように最近は小学校からタブレットを使った授業を行うためか、字をまともに書けない子供たちが増えている気がする。でも、これはタブレットのせいだけでなく小学校で書道の授業が少なくなっていることも大きいかもしれない。教室で子供たちを教えていると書道の授業がほとんどないという声を耳にするようになった。
最近は、ICTでの授業など新しいこともあり、書道の授業などが削られているのだろう。先生たちも新しいことに対応するのに大変だと思う。しかし、ICTを使った授業も大切だが、「モノを見てまねる」という基本的なことが、疎かになっていて大丈夫なのだろうか?と心配になる。(そもそも、人が作ったアプリに習熟することが大切なのだろうか??)
古典の重要単語の一つに「まねぶ」という言葉がある。これは「まねをする」という意味もあるが、「学ぶ」という意味である。つまり、「学ぶ」ということは、まずは先人(先生や先輩など技術や知識を持っている人)の真似をするということなのだ。
歌舞伎の世界でも幼少期に徹底的に古典作品を叩き込まれるが、故・中村勘三郎さんは「型破りな表現ていうのは、型があるからできるんだ。型がなくてやるのは、形無しだ」と言っている。特に小学校や中学校の書道は「書写」といって、書いてある字を写す(真似をする)というものだ。つまり、書くという行為を通して、「学ぶ」ことの「型」を学んでいるわけである。幼少期の大切な時期に「型」を学ばずに成長して、形無しにならないか、心配になるのは私だけだろうか。